前回の記事の続きになります。
北海道の中の一地域で強くなって、自信がついたところまで書きました。前回はメンタル面が重要であったことに触れましたが、今回は具体的にどんな対戦や練習をしていたのか? について焦点を当てていきたいと思います。
遠征がスゴい
北海道の一地域で強くなったとはいえ、北海道は広い。その面積は日本の国土の20%を占めており、東北6県を合計しても届かない大きさである。県単体の人口で見ても500万人以上おり、Top10に入る規模。そして札幌市は日本の五大都市のひとつに数えられる。
そんな広大な北海道にもちろん鉄拳プレイヤーは点在しており、「あの地域に強いプレイヤーがいる」などの情報が入ってきます。地域の仲間とも鉄拳するのですが、そのような情報を聞きつけると、新たな刺激・次のステージを求めて積極的に遠征に行くようになります。
この遠征が、とにかくスゴかった。何が凄いって、遠征自体は別に珍しいものではないですが、その頻度と回数と密度がとにかく半端なかったのです。
もちろん私は普通に大学生していましたので、日中は学業をしているのですが、夕方に出発→夜に着く→閉店まで鉄拳する→朝帰りということを平気でやっていました。普通のゲームセンターは日付変更線を超えたあたりで閉店しますが、朝5時くらいまで営業していた店舗もあり、入り浸っていたのはそのような店舗です。夜7時から朝5時までやっていたとして、鉄拳やっている時間はぶっ続けで10時間くらいになります。観戦もほぼしないので、トイレと飯以外では基本的に席を立ちません。実質9時間=540分、1試合3~4分と考えても150試合程は回してた感じです。
遠征は近いところから遠いところまでだいたい月に数回くらいのペースで通うのですが、全盛期は週2とか週3のペースで徹夜遠征に行っていました。一般常識のある人が見たら絶対に止められていますので、いい友人を持ったなと思います。(しみじみ)
先述した通り北海道は広大なので、移動距離も非常に長い。片道120kmとか普通にあり、これは都内からだと群馬とか栃木に行くような距離ですが、苦も無く遠征に行きまくっていました。(私は車も免許もなかったので常に運転手がついており、これについては本当に感謝しかありません。)
この繰り返しの遠征が実力を伸ばす大きな要素となったことは疑いようがないところですが、特に、移動時間が長いということはデメリットのようで、次のようなメリットもありました。
PDCAサイクル
ビジネスマンなら一度は聞いたことがあると思われるこの用語。簡単に説明すると以下の通りです。
- Plan…計画する
- Do…計画に基づいて実行する
- Check…実行した結果を分析する
- Action…分析結果を元に改善する
これをPlan→Do→Check→Action→Plan→…と繰り返し回し、改善活動を続けることをPDCAサイクルと呼びます。
度重なる遠征では、このPDCAサイクルが完璧に回されていました。
- Plan…どこに遠征に行くかを決める。目的の相手とキャラも決まり、移動している車中で作戦を話し合う。
- Do…ゲームセンターで実際に対戦を行う
- Check…帰りの車中で反省会。次はどうすれば良いかについて話し合う。
- Action…家に帰って、見つけた課題を練習してクリアする
移動の車中では自然と会話することになり、考える場を持つわけですが、これがPlanとCheckの役割を担っていました。やることが明確化し、課題が正確に洗い出され、より有効な改善活動をとることに繋がっていました。
遠征に行っていないときは改善活動に費やします。地元の仲間とも鉄拳しますので、そこでも新たな戦術を試して小さなPDCAサイクルを回します。そして次の遠征で実力を出し切ります。また課題が見つかるので、課題をクリアします。この繰り返し。
当時は特に意識していませんでしたが、遠征というのは自身を成長させる上で非常に理にかなった方法の一つであるかもしれません。
では、具体的にどのような改善活動(練習)をしていたのか?について書いていきます。
具体的な練習内容
当時行っていた練習について、本邦初公開。ただ、効果を必ずしも保証するものではなく、あくまで私はこういう練習をしてましたという一例です。
投げ抜け練習
基礎的な練習です。プラクティスモードで左投げ、右投げ、両パン投げを設定し、ひたすら投げ抜けの練習を行います。基本ノルマとしては、だいたい100回抜けるまでは練習してました。投げ抜けに失敗した場合はカウントしません。また、相手キャラとしてはリリが(個人的には)見づらかったので、主にリリを選択して練習していました。
+αとして、打撃を吸われた時の投げ抜けも行っていました。「右アッパーを打ちながら投げられた時に抜ける」「突衝を打ちながら投げられた時に抜ける」という感じです。やってみるとわかりますが、投げられるとわかっていても難易度が上がります。
基本的には一人で黙々とやってましたが、友人が協力できる場合は友人に頼み、ランダムで投げてもらうとゲーム性が高まって面白くなります。CPUではあり得ないくらいの偏りとか、タイミングのフェイントとかかけてこられるので。
山ステ練習
これも基礎的な練習です。連続でバクステする練習をするわけですが、4回も5回も下がる必要はありませんので、だいたい3回連続でスムーズに下がれることを1回として練習。これを50セット、1P側と2P側両方で行っていました。
私は吉光しか使う気がなかったのであまりやっていませんでしたが、山ステ入力の精度を高める意味では、214入力をするとスウェーしてしまうブライアンやポールを使って練習するとよいでしょう。
上記の投げ抜けも含め、特に何かルールを決めていたわけではないですが、暇さえあればやる日課のひとつになっていました。
徹底したコンボ研究
鉄拳5DRの吉光のコンボは、主に卍葛を使います。ご存じの通りこの技は多段技で、空中コンボでは歯抜けでヒット(卍葛4発のうち、1,2,4発目のみヒット等)するように使われていましたが、軸ずれや相手キャラなどの条件により卍葛のヒットの仕方が変わってきます。
この軸ずれコンボを研究し、360度全てについて適切な軸ずれコンボを把握していました。360度というと大袈裟になりますが、だいたい「ちょいズレ」「大きくズレ」「真横」「真横~やや背面」「背面ちょいズレ」これらが左右あり、あとは真正面と背面で合計12パターン程度です。さらに相手キャラの体格によっても変わってきますが、これも全キャラ分に対し何が入るのか調べていました。(全キャラといっても体格によってやはりパターン化されます)
その他、卍裏拳から卍葛が入る状況であったり、流雪カウンターの伽藍から拾った軸ずれに応じて何が決まるとか、この技の割り込みで浮かせた軸では何が入るとか、コンボは徹底していました。対戦の中ではあまり目立たないですが、もともと鉄拳はコンボ研究から入ったこともあり、当時からコンボ精度は自負していたところです。
セットプレー(ネタ)を増やす
格闘ゲームは状況が目まぐるしく変わり、的確な状況把握と反応が求められますが、その反応を高めるためにセットプレー、言い換えれば「ネタ」をとにかく増やしていました。
これは、「吉光のこの技のあとはこれが有効」というのももちろんありますし、キャラ対策として「飛鳥がこの後にこの技打ってきたらブレードで潰せる」「この連携は華輪で回避できる」みたいなものを研究して調べていました。このブログもネタ連携ばっかりですが、そういったものを量産していました。
ネタが増えてくると「それ知ってる」という状況が増えますので、反応も精度も上がります。知らない人が見ると反応が早いように見えることもあるようですが、ただ記憶に反応しているだけです。
実は私は吉光以外のサブキャラを使うと異常に弱いのですが、覚えているセットプレーに吉光専用のものが多すぎて、他キャラでは使えなくなってしまうことが大きな要因の一つでした。コンボ研究が吉光に偏っていることも然りです。なので、本当に鉄拳力がある人には非推奨かもしれません。
ただこのセットプレー研究の一環で吉光の凶悪な壁攻めを開発し、一気に化けたきっかけにもなりましたので、1キャラを突き詰めたいのであれば研究は大切です。
固有技の対策を全網羅
当時、私はこのフレーム本を持っていました。
この本には全キャラのフレーム情報が掲載されており、非常に重宝したのですが、足りない情報を調べてここに書き加えていました。次のような情報です。
- どちらの横移動で避けられるか
- ブレードとの相性はどうか
- 華輪との相性はどうか
- 何フレームで割り込めるのか
- ブレードや華輪で割り込めるのか
これらを調べ、全て技表に書き込んでいました。
今は恥ずかしながら勉強不足で、「相手の技のコマンドがわからない」ということがたまにあり、「フレームがわからない」はもっとたくさんあるのですが、当時は全て頭の中に入っている状態であったため、状況を適切に把握することができるし、珍しい連携が来たとしても試合の中で早く修正ができました。
ちなみに「相手の技のコマンドがわかる」というのは至極重要で、立ち/しゃがみからしか出せないとか、ワンコマンドで出せないとか、あの技のコマンドミスだなとか、そういった情報は読み合いの中では欠かせない情報となります。相手が技を出しにくい状況を作れるし、本当は何の技を出そうとしたかもわかるので、対策を早く打つことができます。
動画を高速で見る
鉄拳5DRの当時は、今と比べれば動画の流通数は非常に少ないですが、それでも光回線が普及していた時代であり、有名なゲームセンターなどの動画は観ることができました。
そのような動画をダウンロードして、1.2倍くらいの早さで視聴します。普段よりスピードの早くなった試合を見て、「今何を打った」「今のは確定している」などと頭の中で処理します。早い試合に慣れることで、普段の試合を遅く感じるレベルに持っていけるように訓練していました。
これについて具体的な効果測定はできていませんが、そもそも強い人の動画は勉強になり、時短で動画を観ることができ、反応速度も鍛えられるということで、一石三鳥の訓練方法でした。
一言で言えば私はプラクティスしかしてないので、Only Practiceでした。また特に師匠であるとかモデルにした人物はいませんでした。目標とする人と対戦したりとか、今は動画もたくさんあるので、強くなるには何かを参考にした方がより近道かと思います。
ただ、野球選手が素振りをするように、ソロで練習すると基礎的な筋力のようなものが付きます。その時には紹介したような練習が役に立つのかなと思います。
今回はここまで。
次回、最高段位「鉄拳王・黒」になる。そして、闘劇を目指すところまで。
懐かしいですね。
当時はライブモニターで見てましたけど、めちゃくちゃきれいな鉄拳するなあと思い見てました。とにかく横移動と山ステがきれいというか独特ですよね。露払いが全然見えないし、アッパーと平手打ちの出し方も上手いしでかっけーと思ってました。
お名前、存じ上げてます。
ありがとうございます。ライブモニター懐かしいですね!
基本的にアッパーしか打ってませんでしたが、露払いは横移動からしゃがむとしゃがみが見えづらいとかそんな小細工してました。